インド旅行記1 〜夜行列車編〜

世界ドタバタ旅行記

これはかつて薔薇子がインドに行った時の記録である。

薔薇子はインドで入院したため、退屈な入院生活の中で書いた記録である。




薔薇子のインド旅行は

カルカッタ(インドの首都)というところから始まった。

カルカッタでの一枚。

カルカッタに着くとあれよあれよという間に

薔薇子はバラナシ行きの夜行列車に乗っていた。

寝台列車である。

列車で一晩越すのである。

薔薇子が予約していた席は

エアコン付き2等で

1等の次に良い、インドの富裕層が乗るような席だし、

地球の歩き方にも

「快適」

なんて書かれているため、

「わりと綺麗めのビジネスホテルぐらいは過ごしやすいんだろうな」

ぐらいに思っていた。

しかし席に向かうと薔薇子の眉間は寄らずにはいられないようであった。

薔薇子が寝るはずの席は

小汚い荷物棚かなんかにしか見えなかったのである。

これが薔薇子の寝床。下は老夫婦が寝る。

こんなものを

「快適」

なんて書いた

地球の歩き方の編集者はインド人なのであろうか。

とにかく薔薇子が

「これ辛い…」

と下の寝床(夜になるまで下の寝床はイスとして使うのだ)から薔薇子の荷物棚を眺めていると

「快適な」二等席でまず薔薇子を迎えてくれたのは

大量のネズミであった。

何かがささっと床を這って、

薔薇子の足にあたったのである。

一瞬ゴキブリだと思ったが、次の瞬間には薔薇子はもうネズミだということを判断した。

ゴキブリはあんなにでかくないし、ひょろひゅろした尻尾なんてついていない。

「ギャ~~~」

と叫ぶと周りのインド人は

なんだなんだと振り返った。

薔薇子が

「ね、ネズミが~」

といってもインド人は

ただへらへら笑っているだけであった。

そうしてるうちにもネズミは何匹も何匹も薔薇子の足元を通り過ぎた。

「ミッキーマウスだと思ってがんばんな!」

と言われたけど

冗談じゃない。

ミッキーマウスはあんなに素早く地面を這いずり回って、「チュー」とか言ったりしない。

ミッキーは陽気に二足歩行で歩き、「ハイ!僕ミッキー」とか言ったりするのだ。

しかし、後日インドの街中でネズミを何度か見かけたが

わりと可愛い顔をしていた。

ウォルト•ディズニーがオフィスに現れるネズミに餌をやって可愛がり、

そこからミッキーが誕生した

なんていうミッキー誕生説もあるし、

もしかしたら確かにあれはミッキーだったのかもしれない。

足元を見ると、2匹のネズミがさっと通ったこともあった。

ミッキーとミニーなのであろうか。

憧れのはずのネズミ出現に恐れおののいていると

次に薔薇子を迎えてくれたのは一人のエロ親父であった。

インドの二等列車は一つのコンパートメントに4人入り、

薔薇子の席は老夫婦と相席で3人だった。

その親父、違う席のくせに何度も薔薇子のコンパートメントに来ては、

向かい側に座って顔を眺めてくるのである。

「愛想良く話でもしたら、ここに居座られる!」

と考えた薔薇子は極力、彼と目を合わさないようにし、

話しかけられてもそっけなく返した。

夜になるとコンパートメントのカーテンをしめ、寝るのだが

そのオヤジが深夜になっても寝ずに、

薔薇子のコンパートメントのカーテンをチラッと開けては寝ているのを確認していたことぐらい知っている。

小汚い荷物棚に横たわり、

ミッキーとミニーとエロ親父に囲まれて、

風呂にも入らず16時間の長距離移動、

早くも薔薇子はインドなんかに一人旅で来たことを

死ぬほど後悔していた。

朝になると、寝てすっきりしたのであろうか、

ご機嫌になっていた老夫婦が話しかけて来た。

「それにしても君の上に上がるジャンプ力がすごいことすごいこと。

アッハハーイッーヒッヒーウーッフフー!」

なんのことかというと、薔薇子の寝床は荷物棚だったため、

下で寝ているおばあさんのベッドに足をかけて上がるのもなんだから

トイレに起きたときなどは

荷物棚を固定している手すりみたいのに手をかけ、

それだけでヒョイっとジャンプして、荷物棚に乗っていたのだ。

再度同じ写真を貼り付けるが、この手すり見たいのに手をかけてジャンプして登っていた。

確かに自分でも

「ジャンプだけでよくもこれだけいとも簡単に上がれているな」

なんて思っていたけれど

それを薄目で見ていたのだろうか、

朝、何がそんなに面白いのかわからないくらい

死ぬほど大笑いしながらそんなことを言ってきた。

「ほら、日本てカラテがあるだろ?

だからあんなジャンプで上がれちゃうんだな。

アーッハハ!

インド人女性はあんなこと絶対にできないよ!

イーッヒヒー!!

やっぱ日本人はカラテがあるからマッスルなんだな!

ウーッフフー」

と薔薇子が空手をやってることを前提に話が進められていたので

生まれてこのかた、空手なんて一度もやったことがなかったが、

薔薇子も

「そうなんです。

日本人はカラテがあってマッスルだからあんなにカンタンにジャンプができるんです、

ウーッフフー!」

と言いながらマッスルポーズまでした。

これで

日本にはサムライがいる

的な

日本人はみんな空手をやっている

という間違った固定観念が

めでたく彼の中で定着したのであった。

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