カルカッタの町をぶらぶらしていた時の話である。
薔薇子は、薬局的なものがあり、その中に体重計があるのを見つけた。
旅行中は体重が計れなくて気にしてしまうのが乙女心。
滞在中はあまり気にせず食べてしまっていたので
自分の体重が気になって気になって仕方なく、薬局を見つけてラッキーと思った薔薇子は体重を計ってみることに決めた。
薔薇子が体重計に乗ろうとスタンバっていると
日本人女性が体重計に乗るのをおもしろく感じたのか
インド人の男たち5人くらいが薔薇子を囲み、のぞいてきた。
もちろん日本で男たちに囲まれながら体重計に乗るなんてそんなこと絶対にいやだが、
インド人に見られても、どうせ二度と会うことはなさそうな人たちだし
「見ないで」とか言ったところでインド人のこと、
覗き込むのをやめないことが容易に想像される。
薔薇子は晒し者になるのはインドでは仕方のないことだと思い
彼らを無視して体重計に乗ることにした。
増えている…
2kgも増えている…!!
たった2週間でこんなに増えるものか…!
あんなに汗をたらしたながら毎日歩いていたのに…!
異常な暑さのインドを夏に旅行して、体重が増えるのなんて
薔薇子ぐらいなもんである。
旅行にくる前、ストイックにダイエットしていたため
太りやすくなっていた
ということもあるが
主食はサラダ的な生活から
インドの塩分入りまくりのカレーなんか食ってりゃ太るに決まってる。
薔薇子は絶句し
ショックで軽くふらついた。
この世の終わり
みたいな顔をしてしばらく呆然としていると
薔薇子の体重見物客たちは
「なんだ、どうしたんだ」
と薔薇子に聞いてきた。
「太った…!
デブすぎる!」
と叫ぶと
「なんだ、こんな体重ぐらい、何を気にしてる。グッドグッドだ。」
と親指を立てて言ってくるのである。
「違う、グッドグッドのわけがない。バッドバッドなんだ。」
と言い返し、薔薇子がなお嘆き続けていると
体重見物人の一人のインド人が、
「わかった、ちょっと待て。
おい!そこのお前!!」
と、薬局にいた若い女を呼び
彼女に体重計に乗るよう指示した。
おいおい、いきなり呼び止められて体重計に乗れって言われたって乗るわけないだろ。
女心をわかっていないインド男め。
と思ったが、
彼女は全く嫌がる様子はなく、それどころか軽く微笑みながら
体重計に乗ったのだ。
体重計の針はスーパーで売っている米の袋8つ以上を差していた。
すると男たちは
「ほら、これをみろ」
と得意げに体重計を指し薔薇子に訴えかけてくるわけである。
インド人女性はカレーばかり食べているせいか大半が太っており、
サリーの中から、チラッと見える、でっぷりとでたお腹の肉を薔薇子は何度も目にしていた。
「インドと日本は美の基準が違う。日本人女性はみんな細いのだ。
日本だと私はデブすぎるんだ!」
というと
男たちは
「いいか、この女はお前二人分もあるんだぞ。
そんなんでわめいて、この女はどうする?」
とその女を指しながら真剣な顔で言ってくるのである。
その女もそんなこと言われてなお、軽く微笑んでいるのである。
もちろん2人分のわけがない。
数学に長けているはずのインド人のくせに計算もできないのか。
体重のショックが大きすぎるあまり、適当なことを真顔でいってくるインド人に腹が立ってしまった。
薔薇子はなんだかイライラして
「あんたどんだけ大ざっぱ?!
だから日本とインドじゃ違うんだってば!!」
と言って、なお嘆き続けた。
彼らはその後も
「日本人はセクシーだから大丈夫だ」
とか
「日本人は白いから大丈夫だ」
と薔薇子が嘆いている体重問題とは無関係の慰めをしてくるので
薔薇子の心は一向に晴れなかった。
今思い返すと、周りのインド人も薔薇子も
女にたいして、ずいぶんな失礼を働いたものである。
しかし女もたいして気にする様子もなくいってしまった。
こんなにいちいち何も気にしないからこそ
インド人女性はみんなおデブちゃんだし
食べ物に菌は入ってるし
インド人は皆ヘラヘラしてるのかなぁ
なんて思う。
今思えば
彼らは彼らなりに私を元気づけようと頑張っていたのだから
あんな態度をとってしまって悪かったかな、ありがとう
と申し訳なさと感謝の念が湧いてきた。
インド旅行を終えて、結果的には入院生活(薔薇子はインドで腹を下し入院した)で、体重が戻るどころかマイナスとなった。
旅行前に
「インドで腹を下したら痩せられるのに」
なんてヘラヘラ言っていた薔薇子だが
太っ腹なヒンズー教の神々が
見事に叶えてくれてしまったわけである。
めでたく願いがかなった薔薇子だが
あんな辛い思いをするぐらいなら(インドでの入院生活は壮絶だった)
ちょっとぐらい体重が増えたほうがマシだな
ってやっぱり思う。
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