1、映画『トイストーリー』基本情報
監督 :ジョン・ラセター
脚本 :ジョス・ウィードン、アンドリュー・スタントン、ジョエル・コーエン
アレック・ソコロウ
製作 :ラルフ・グッジェンハイム、ボニー・アーノルド
製作総指揮 :エドウィン・キャットマル、スティーブ・ジョブズ
出演者 (原語版):トム・ハンクス、ティム・アレン
(日本語吹き替え版):唐沢寿明、所ジョージ
音楽 :ランディ・ニューマン
2、『トイストーリー』製作秘話
PIXAR社はもともとルーカスフィルムのコンピュータアニメーション部門がピクサーの前身でした。その後、スティーブ・ジョブズがこの部門を買収し、独立した会社になります。
短編アニメばかり作っていたピクサー社ですが、初のコンピュータによる長編アニメに挑戦することになり、ディズニーの配給を受け、『トイストーリー』が誕生します。
ウォルト・ディズニーも短編アニメから初の長編アニメ『白雪姫』を完成させますし、ジョン・ラセターもCGアニメが発達していなかった頃に長編アニメ『トイストーリー』を完成させます。
両者に同じスピリットを感じますね。
①トイストーリーは短編映画『ティントイ』から始まった。
その『トイストーリー』の先駆けとなったのが、短編アニメ『ティン・トイ』
この短編アニメは、おもちゃを舐めてよだれでベトベトにする赤ちゃんを、ブリキのおもちゃ「ティニー』が怖がる話です。
おもちゃに意志があり、おもちゃの視点に立って描いたこの作品。
ジョン・ラセターは、おもちゃを舐める甥っ子を見てアイディアが湧いたそう。
これはアカデミー賞短編アニメ賞を受賞します。
この「ティニー」が主人公の、クリスマスアニメをもう少し長くして製作しようとし配給会社を探していたところ、ディズニー社が手をあげたのです。
はじめは30分のテレビ用アニメのはずでしたが、ディズニーが「30分のものが作れるのなら80分もつくれるはずだ」と言い、長編アニメの作成が決まりました。
そこでPIXARはおもちゃの長編アニメーションを作ることにします。
それが『トイストーリー』でした。
②「ディズニー作品」でないものを作りたい!!
トイストーリーはディズニー作品として広く愛されていますが、製作者たちが持っていた気持ちはなんと
「ディズニーと同じものは作りたくない」
ということでした。
おとぎ話やミュージカルをわざと避けたのです。
確かにPIXARの作品はミュージカルやおとぎ話を元にしたものはありませんね。
③どっちが先に誕生した?!二人の主人公ウッディとバズの誕生!
既存のアニメと違った物を作りたかったジョン・ラセターは、一人の主人公ではなく、二人の主人公にすることに決めます。
その二人とは、古いおもちゃと新しいおもちゃ。その両者の葛藤を描くことに決めました。
自分の息子がアクションフィギュアで遊んでいるのを発見したジョン、そしてアニメーターたちは、手やいろいろな部位を動かせる人形、バズを生み出したそう。
実はウッディよりもバズが先に生まれたのですね!
ウッディははじめなんと腹話術の人形だったのですが、あるカウボーイが好きなアニメーターがジョンに「カウボーイはどうか?」と聞きます。
ジョンはそのアイディアに賛同し、ウッディはカウボーイに。
そして50年代のアメリカではヒーロー像がカウボーイから宇宙飛行士に変わったため、タイプの違うこの二つを主人公のキャラクターとして決めたそうです。
④キャラクター秘話
主人公ウッディ
主人公ウッディのキャラクターの特徴は「自己中心的だけれども周りに配慮するように見える」キャラクターだそう。
確かにいつも周囲に配慮していますよね。
しかし「自分が一番のおもちゃでなければ嫌だ」という自己中な一面もあります。
アニメーターたちは「欠点があるけれども魅力的」なキャラクターにしたかったそうですよ。
声優は「知る人ぞ知る」名優トム・ハンクス。
ジョンはトムハンクスただ一人しか考えていなかったとのこと。
ジョンのトムへの出演交渉の口説き文句は
「あなたの声は永遠に生き続け、子供や孫を喜ばせるだろう」
ということ。
それを聞いたトムは「ギャラがコーヒー一杯でもやりたい」と思ったそうですよ。
本当にその通りになりましたよね。
主人公バズ・ライトイヤー
バズ・ライトイヤーのキャラクター設定は、声優のティム・アレンが大きく影響したそう。
なんとはじめ、バズは自分をおもちゃだと自覚している設定だったのです。
しかし、ティムの誠実な声を聞いて、アニメーターたちは「おもちゃだと自覚せず、本物のスペースレンジャーだと勘違いしている方が面白い」ということに気づいたそう。
これは声優ティムの偉大な功績ですよね!!
ディズニーではよくあることなのですが、アニメが作成される前に声優を決めて、その声からキャラクターの性格を決定づけることが結構あるのです。
一方的に作ったアニメの声をただ吹き込むだけではなく、俳優たちをきちんとアニメに反映させるところが素敵ですよね。
Mrポテトヘッド
Mrポテトヘッドの特徴は「すぐ人を責めるけれど面白い」ということ。
Mrポテトヘッドを演じたドン・リックルズは本当に外見から内面までポテトヘッドにそっくり!!
レックス
レックスは恐竜。地球上で最も恐ろしい生き物なのに、手が短すぎることをコンプレックスにして、愛すべきキャラクターにしたそう。
時にコンプレックスは人から愛されるチャームポイントとなりますよね。
スリンキー
体が伸びる犬「スリンキー」の特徴は、なんでも受け入れること。人生にのんびり向き合っています。
そんな風に私たちもなりたいですよね。
⑤素晴らしき挿入歌!「君はともだち」
ミュージカルにはしたくなかったけれど「音楽は大事」ということで、挿入歌を入れることにしたジョンはランディ・ニューマンに曲を頼みます。
ジョンをはじめ、アニメーターたちはこの曲を聞き、大喜び。
この曲を作ったランディ・ニューマンは、「トイストーリーの曲を作っている時は人生の華だった、最高だった」と言っています。
その通り、誰もが愛する歌となりましたね。
ちなみにこの曲は『トイストーリー』のなかで始めと終わりに流れます。
始め→ アンディとウッディの仲
終わり→ウッディとバズの仲
を表しているそうですよ!!
⑥製作中止の危機だった?!危機一髪『トイストーリー』の誕生!!
トイストーリーの制作は順風満帆というわけではありませんでした。
試作を見たディズニーは、「子供にしか受けない。もっと大人にも受ける作品を。もっと尖った作品にしろ。」
とジョンに命じました。
思い詰めたアニメーターたちは、どんどんウッディを尖らせていきます。
するとウッディは愛すべきキャラクターとはいえないようなどんどん嫌なやつになっていきました。
そしてディズニーに言われた通り、手直しした『トイストーリー』を見せると、ディズニーは案の定、「これではダメだ。製作中止だ。」とジョンに言い放ちます。
このトイストーリーはジョンを始めアニメーターたちとしても不本意な出来だったそう。
そこでジョンは2週間の猶予をもらえるように頼み、それでダメだったら、諦めると言います。
その2週間、アニメーターたちは昼夜問わず、必死でストーリーを冒頭から全てを練り直します。
始めから自分たちが「こうしたい」と思うように作ったそうです。
ジョンは「自分たちのやりたいようにやろう。失敗するなら自分の信念を貫いて失敗する方がいい」と考えたそうです。
2週間たち、新たな物を見せるとディズニーからOKがでたそうです。
この2週間がなかったら名作は生まれなかったのかもしれません。
ジョンは「自分の感覚を信じるという大切なことを学べた」と言っています。
私たちは、よく助言をもらいますが、それを全て信じるのではなく自分の信念や熱い思いが成功をもたらすこともありますよね。
自分を信じること、それが名作を産み続ける秘訣なのかもしれません。
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